【資料あり】ICC『リアルタイム・ウェブの現在とこれから』に参加しました

2010/05/05 記事/コラム このエントリをはてなブックマークに登録

伊予柑です。ICCインターコミュニケーションセンターで行われたイベントに参加しました。講演の資料を公開します。

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「オープン・スペース 2010」プレ・イヴェント 「リアルタイム・ウェブの現在とこれから」

現在,ウェブにおけるリアルタイム性が持つ新しい可能性に注目が集まっています.
たとえば,TwitterやUSTREAMといったサーヴィスに代表される,「いま、ここ」を共有できるネット・アーキテクチャによって,どこでもだれでもが即時的に,かつ相互に情報を発信/受信することができるようになりました.
本来,非同期型の通信技術を用いたインターネットにおける,ある意味革命的なモメントとして認識されている「リアルタイム・ウェブ」の現状と,その可能性について考えます.

日時:2010年5月4日(火・祝)
出演:伊豫田旭彦(伊予柑),大野真吾(Merce Death),千房けん輔,津田大介,濱野智史,畠中実(ICC)

録画>【中継】ICC『リアルタイム・ウェブの現在とこれから』 – ニコニコ生放送 (プレミアム会員のみ、5/11まで閲覧可能)
累計来場数 1980名
コメント数 5535
放送担当:じぇい 上コメント:鳥居みゆっき

機材トラブルにより、特に前半1時間程度に映像や音声の乱れがありましたことをお詫びします。

以下、私の講演資料です。内容は当日のトークをもとに再構成してあります。

 

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初めまして。ニコニコ生放送や、Ustreamでインターネット放送を使って色々な実験をしている、伊豫田旭彦と言います。普段放送ではよくお話するのですが、こうした場は初めてです。大変、大変緊張しております。緊張すると早口になるタチですので、お聞き苦しければ、申し訳ありません。

 

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まず、経歴を簡単にお話させてください。
1981年5月4日生まれです。今日でちょうど29になりました(笑) こうした日にICCにお呼びいただけることを大変嬉しく思います。北陸先端大というところでインタラクションや創造性支援という領域の勉強をしていました。
いまはIT企業でSEをしています。
NKHニコ生企画放送局という団体を去年立ち上げて代表をしております。

 

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ところで会場のみなさまは、生放送をごらんになったことがあるでしょうか。インターネット放送をみたことがあるかた、手をあげていただけますか?

(8割くらいのひとが手をあげる)

すごい! 多くのかたがご存じなんですね。ではその部分は簡単にすませます。インターネット放送って「誰でも、どこでも、生放送ができるよね」という話をします。次に、自分がやってきた活動を交えながらネット放送の何がおもしろいのかを解き明かしていきたいとおもいます。ネット放送はただの安いテレビじゃないんだぞ、ということをお伝えしようとおもます。

 

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インターネット放送の特徴は誰でも放送できるところです。

 

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これはちょうどテレビのアマチュア版だということができます。
書籍、ラジオ、テレビというように、商業のマス媒体があります。こうしたプロフェッショナルなメディアに相対する形で、書籍だったらblogや自費出版の同人誌、ラジオだったらpodcastやネトラジ、ミニFMといったアマチュアメディアがあったわけです。しかし、テレビと同じ役割をもつものがありませんでした。youtubeやニコニコ動画でしょうか? それらは私にはレンタルビデオと同じようにおもいます。放送メディアというのは、不特定多数に、映像と音声を、リアルタイムに配信できるものだと私は定義します。2009年から利用者が増えたustreamやニコニコ生放送というのは、まさにテレビのアマチュア版だといえます。

 

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ネット放送の特徴はどこからでも配信できるところです。

 

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画像は私が2009年の9月にドイツからおこなった放送の様子です。ノートPCに携帯端末をつけて、ドイツの映像を日本に届けました。ご覧のように、日本からみている人が「おおおお」とコメントをしています。

 

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今、iPhoneで誰でも放送ができます。世界中で高速な携帯回線が普及しているので、まさにどこからでも放送ができます。世界なんて大きな話だけでなく、居酒屋や自宅からだって配信できるのです。

 

 

 

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そして当たり前の話なのですが、ネット生放送は、生放送です。テレビさながらに、不特定多数に映像と音声をリアルタイムで配信できます。

 

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画像は先日行われた『朝までダダ漏れ生放送』という番組です。ケツダンポトフというサイトをやっている企業が主催しました。こちらにもいらっしゃる津田大介さんが登場しています。司会は田原総一朗さんで、まるで「朝生」さながらの番組となりました。テレビと同じことが、誰でもできるのです。

 

さて、ここでCMです

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津田「いまの空気だよね」w

 

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(深く礼をする)

(会場拍手、ネットでは88888のコメント)

ありがとうございます(笑) 会場の拍手と、ネットの拍手が同期しているのを体験いただけましたでしょうか。この一体感がキーワードになります。

 

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インターネット放送って何がおもしろいの? 単なる安いテレビじゃないの? 地方局ならぬインターネット地方局でしかないんじゃないの? …とおもわれるかたもいらっしゃるとおもいます。テレビとネット放送は違うメディアだとはっきり申し上げようとおもいます。

 

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私のネット放送との出会いは2008年の『ニコニコ大会議』というニコニコ動画の主催したイベントでした。このとき初めて、ネット放送のコメントが現実に反映されたんですね。ちょうどこの部屋の状況のように、ネット放送の画面がプロジェクションされていました。イベントの前説で芸人さんがでてきたんですが、盛り上げようとする芸人をほっておいて、今ご覧いただいているように適当なコメントがながれてくるんですね。「ちょっと太ってねw」とか「いえーいみてるー?」とか。これに私は衝撃をうけました。

インターネットというのは、これまで現実にほとんど関係のない世界でした。確かにネットでラー油が大人気でラー油が消えるとか、投票の結果でなにかがあるとか、就職に便利とかそういう面はあります。しかし、私たちが知っているインターネットの姿というのは、そういうものではないでしょう。ネットで日々私たちが経験しているのは「地震がおきたよ!」「こっちも揺れた!」というようなtwitterでの会話だったり、skypeでの盛り上がった会話だったりするわけです。常日頃ネットのコミュニケーションに触れているというのに、その盛り上がりや感情というのはリアルに直接的に反映されることはなかったんですね。

でも、ネット放送を使うと違うぞ、と。何かがおきると「wwwwww」の弾幕がおきたりして、ネットのなかのコミュニケーションがリアルに直接見えるようになったのです。

 

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ニコニコ生放送のサービスが始まってから、私はすぐにとびつきました。そして放送し始めて気づきました。まるで、ネット上の友達と一緒に遊んでるみたいじゃん、と。

 

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競馬場で遊ぶ番組を作ったことがあります。私がノートPCと通信端末を持ち歩いて、競馬場にいき、その様子を配信しました。馬を選ぶ段階ではネットに「どいつがいい?」と呼びかけます。すると不特定多数の視聴者が好き勝手に予想をして「コレを買え」「こいつが強い」と返してきます。そのなかで適当に馬券を買って、レースに挑みます。馬が走り出すと、盛り上がるんですね。現場のスタンドでもものすごく盛り上がるのですが、ネットでも凄くもりあがります。友達といっしょに遊びにきたかのように、いけええええ! と一緒に馬を応援します。この一体感というのは、一度味わうとやみつきになります。

 

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すっかりはまって何度も放送するようになったのですが、そのうち気がつきました。ネットの不特定多数と遊ぶと楽しい。そして彼らが興味をもってるのはトラブルだったりその人の活動そのものだと。つまり、人生がコンテンツなんだと。ケツダンポトフのそらのさんも、そんなかんじですよね。

 

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『おい、ゆとり! 明日泊めてください』という番組をやりました。2009年6月に毎日ネットに向かって「あした泊めてください」と呼びかけ、実際にとめてもらいました。誰もいない場合はネットカフェにとまりました。期間は30日で、日曜はお休みの日とし、合計15名程度が泊めてくれました。

この放送で気がついたのは「ネット放送をつかうと人を信頼するコストが下がる」ということです。見知らぬ誰かを泊めるというのは、相当信頼のハードルが高いです。これまでIRC、メッセンジャー、twitterなどのメディアは声をかけるコストを下げました。しかし、テキストでやりとりでは泊めるまで半年くらいかかるでしょう。ネット放送をつかうとそれが1日、いや1時間程度まで短縮されてしまう。

これはおもしろいなーとおもいました。

 

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ネット放送の特徴で見逃してはならない点は、双方向性です。

 

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ネット放送に寄せられるコメント、特にニコニコ動画の場合、実は中身に意味がありません。盛り上がっているシーンで大量の「wwww」などのコメントがきて、盛り上がっていることはわかります。そのコメント一つ一つの内容がディスカッションになっているかというと、そんなことはない、というかできないような設計になっています。

これまでネットというのは文章でやりとりする人のためのメディアでした。内容のある文章をかけないと相手にしてもらえない。でも、ネット放送へのコメントというのは意味がなくても雰囲気を伝えあえる。これはおもしろい。

ということで私の仲間が作ったのがコレです。クラブに設置するVJ装置です。円筒状の布にコメントを投影して、プログラムでふわっと独自の動きをつけています。音楽がもりあがってくるとコメントが増えるので、全体的に明るくなります。音楽がもりさがるとコメントがほとんどないので、暗くなります。その場のノリにあわせて自動的に変化するわけです。さらに、ネットでコメントをうつ側としても、クラブへの参加感がでます。

 

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ネット放送の特徴はいつでもだれでも生放送できることだと述べました。誰でもできるんなら、人間である必要すらないじゃないか。ということで『自走式ニコ生戦車』というものをつくりました。

このラジコンは完全に無人でどこでも撮影することができる自走式カメラになっています。無線通信端末でコメントを受信し、コメントが「前へ」といったら前にすすみます。そしてうつった映像を放送として垂れ流します。つまり、視聴者がみたいものを見ることができるラジコンです。

 

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実際に配置してみると、まず、女の子を追いかけます(笑) もし視聴者が同時に見たいものが複数あった場合は意見がわかれます。そのときは多数決できまります。みんなが見たいものを見られるという、きわめて民主的なカメラです。

放送におけるカメラというのは、放送の本質です。カメラが、何を写すかをきめ、その情報以外は目にできないからです。そのコントロールをユーザーにゆだねるというのは、ちょっとおもしろいんじゃないかとおもってます。

 

 

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現在私は『中継人生』という24時間自宅をたれながす放送をしています。私は3人でルームシェアをしているのですが、誰かがカメラの前にはいるようにしています。垂れ流し生活を初めて1ヶ月になりました。

これまでお話してきた放送というのは、番組的なものでした。区切られた時間のなかで何かがおきます。しかし、24時間配信というのはまさに垂れ流しで、見ることができる人間はいません。基本的につまらない場面しかながれませんし、いつおもしろいことがおきるのかもわからないのです。

しかしおもしろいことに、人が少ない時間帯でも10名程度みているひとがいます。そうした人に話をきいたところ「見てないけど音だけ流してる」とのことです。ブラウザで放送を立ち上げておくと、掃除機の音、料理の音などの生活音がながれてきます。一人暮らしをしているひとにとって、まるで隣の部屋でおかんが家事をしているように感じると。そして友達がきたりして中継がおもしろくなってくると、初めて画面を見るということです。アンビエントな視聴スタイルができたというのが、発見でした。

 

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さて、かのようにいろんな放送実験をしています。今回ご覧いただいているスライドも、実は放送を通してできました。準備がおくれた私は、今朝5時までスライドをつくっていました。そして、スライドができるたびに放送をして、視聴者にきいてもらい、修正点をおしえてもらったんですね。まるで研究室の教授がいつでもいるかのようにアドバイスをくれました。

 

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ネットの双方向性というのはこんなつかいかたもできるわけです。ご協力いただいたみなさまありがとうございます。

さて、ここまでご覧になったかたは私がどんな人間だかなんとなくわかったでしょうか。

 

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(お辞儀)

(拍手&88888のコメント)

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